音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

12,In Her Family / Pat Metheny(2017)

パット・メセニーの不定調性コード進行分析
(2013-06-09→2016→2017改訂)

   

 


Pat Metheny-Still Life (Talking)-In her family 1987.wmv

G#m7(9) |DM7 |EM7(9,#11) |D#m7 |

C#m7 EM7(9) |F#sus4(9) EM7(9) |
C#m7 G#m7(9) |F#/A Aadd9|

E/G# BbM7(#11)/F |E BbM7(#11)/D |
E BbM7(#11) |E |

これが前半です。


sirabhornもそうでしたが、この曲でも二つのコードを繰り返すシークエンスがありますね。スティーリー・ダンの時もそうでしたが、これは普遍的な「脈絡を作る一つの方法」だと思います。どんな不可思議な進行でも、繰り返すことで「意味ができてしまう」という発見であると思います。これは「機能和声的な感覚以外で音楽を作りたい」というような欲求がなければ見つからない観点であると思います。

 

何にでも道はある。

 

最初の和声を機能和声的にあえて行ってみましょう。

G#m7--DM7というコード進行、G#m7=Iとした場合、DM7は弱いサブドミナントです。DM7(9)になったらサブドミナントマイナーです。これは構成音だけを見た場合の分類で、不定調性論でコードマトリックスから導き出します。


DM7はG#m7から見たivを持つ(SD)、9thを入れると、ivとvi♭を持つ(SDm)、という理由からです。

 

G#m7(9)--G#,B,D#,F#,A#

DM7---D,F#,A,C#

 

ですから、変化音の多い進行なので、動進行(不定調性論)となります。

 

全体的にG#mのダイアトニックコードの名残のような和声が使われていますから、sirabhornよりも調的な排除を行っていないように思えます。

 

C#m7 EM7(9) |F#sus4(9) EM7(9) |C#m7 G#m7(9) |F# Aadd9|


中間のこの辺りは、微妙にG#mのキーを感じます。
これは、
IVm VIbM7 |VIIbsus4 VIbM7 |IVm7 Im7 |VIIb IIbadd9|
となり、最後のIIbだけノンダイアトニックコードであるがゆえに「調性的進行の名残」を感じるわけです。

こうした加減をうまく配置するためにも基礎音楽理論の学習は必要ですね。このバランスを耳だけで作るのは結構な集中力が必要です。故に不定調性論は機能和声学習の先にあるスタンス、としています。


前半最後のE---BbM7(#11)の流れも絶妙です。
それまでの空気感を均すかのようなシークエンスで一息をつく、というsirabhornでもあった流れです。それでもここも増四度の移動です。
E△=E,G,B
BbM7(#11)=Bb,D,F,A,E
という流れで「静和音から動和音への動進行」です。軸がEに置かれているようにも思えます。


こういう進行は、一点を軸にしてがらりと風景が変わる現代的な映像効果を感じます。

add9和音や7sus4(9)という和音も個々の印象を把握し、使い慣れないととっさには出てきません。

また、この曲には7thコードがないのも特徴です。7thコードは外部音に流れようとします。つまりそれがない、ということは音楽は良い意味での停滞感で統一されるからです。

つまり「不思議な静的な曲」になる、というわけです。

 

パット・メセニーでしたら、意図してアルバムの他の曲の動的感覚とは違う効果を狙う、ぐらいのことは直感的にできるでしょう。

 


この曲からインスパイアされた次のような進行でメロディを作ってみる、というのも良いトレーニングになります。
G#m |DM7 |EM7 |D#m7 |
C#m7 EM7 |F#sus4 EM7 |C#m7 G#m7 |F# Aadd9|
E BbM7 |E BbM7 |E BbM7 |E |

Xm、XM7、Xsus4、Xadd9の響きに慣れ、ランダムに連鎖させながら、メロディを作る癖を付けます。響きを連鎖させているうちに何となくメロディが浮かんで来ればOKです。

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