音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

46, Any World(That I'm Welcome To)からの考察 / Steely Dan

スティーリー・ダンの不定調性進行分析

46,Any World(That I'm Welcome To) / Steely Dan

   

楽曲の構造分析は"3分の曲を30分で聴く"楽しみかもしれません。音楽をやる人のための瞑想の時間、と言ってもいいかもしれません笑。

だからそれをこうやってシェアする場合、もう少し一般化して書かないと、理解できない、のは当然ですね。なんとかうまく説明していきたいと思います。


Steely Dan - Any World (That I'm Welcome To)

 

Aメロ
C |Ab |Db Eb |Bb |
C |Ab |Db Eb |

Bメロ
Fm7 |Bb |Fm7 |Bb |
Fm7 |Bb AbM7 |

サビ
C |Bb |C |Bb |
C |Bb |Ab |Bb | (C) |

Aメロはメジャーコードだけの連鎖と考えて差し支えないです。(u5和声単位連鎖=不定調性論)。ビートルズ的なコード利用の展開、と言えます。


C→Abというのは、曲を作る人だったら、誰でも一度は「いいね、これ」って思ったことがある展開です。作曲する人にとっては、この進行だけで「曲が決まる」と言えます。漫画のコマ割りが白枠で示されただけで、ストーリーが浮かぶ、というのに似てます。決まってしまうんです。だからどんなにへんてこりんな進行がその後に続いても、「辻褄を合わせることができる」と確信しながら曲を作ることができます。

だから調から逸脱しても、最初の進行に二行目で戻ることで、本人の中では独自の辻褄が合っているわけです。スティーリー・ダンの楽曲にはこうした孤高の辻褄がたくさんります。

「これやったら、独りよがりって言われて誰も理解せんだろうなあ」

を実践してきます笑。見ていてすごく冷めて見てしまう進行も、この人たちがやるともはや気持ちよさすら感じます。真似のできない「自信」ですよね笑。同じことやっても「Sダンみたい」で跳ね除けられてしまいます笑。

だからスティーリー・ダンがやっているからと言って一般的にならないのは、こうしたやりとりが日々行われているからではないでしょうか笑。彼らは特別なのです。彼らはやっていいんです。

 

これはそれだけ不可解な進行が「理解されづらい」と一般的に思い込まれているからでしょう。だから

"やめようよ、そのスティーリー・ダンみたいなやつ、君がやってもしようがないよ"

と言われても、そこで怖気付いてはいけません。

もしそれがあなたが本当に求めるものであるならば、「スティーリーっぽいやつ作りたいなぁ」という軽い気持ちで作ったのではないのなら、堂々と突き進んでください。

上のような文句は、ファッションであり、「君のためを思って言ってる系」の余計なお世話なのです。

そう言ってる割に「君がどういう人間で、どんな音楽が向いているから、とにかく有名になるまでは、君のこれこれこういうところを生かして、こういう音楽を一緒に作っていこう!」とは言ってくれないものです。

昔は放任主義でも人は育ちましたが、今は価値が増えすぎて、指針がなくてはどんなに優れた人でも迷ってしまう時代になりました。それならば、自分が信じた道をまずは突き進んで失敗した方が気づきが早い、ということができます。

スティーリー・ダンの音楽はそう言った意味で、損をしています。素晴らしい音楽構造を発信しているのに、冷ややかな目で見られているのはこのためでしょう。それは理解不足、民度の低さ以外の何物でもありません。

彼らの個性、自身、高い音楽への目的をもっと見てみましょう。崇拝するほどでなくても「これは面白い!使える!」と思える技はたくさん発信していると思います。

     

 

話を戻します。あとAメロのDb-EbはIV-V感(通例のサブドミナント→ドミナント進行感)を作り、故にBbは仮のトニックのように感じさせます。そして続くCがBbにとってのIIのように響きながらも、メロディとともに元のシークエンスに戻るので、そのI→II感はすぐにリセットされます。
何を言っているか、というと、現れてくるコードのたびに、新たな進行感を展開していく、というわけです。つまり過ぎたコードが作ってきた辻褄を考えず、常にその瞬間の「進行感」で曲を構成する感じです。

今日はまずカレーを食べて、そのあとショッピングに行って、美術館に行って、夕食の材料を買って帰ろう、というのが普通の人だとしたら、ダン風にいうと、

今日はまずカレーを食べて、そのあとお寿司を食べて、次はお腹も空くだろうからパスタを食べに行って、そのあとでお好み焼き屋さんに行って、お腹がいっぱいになったら中華料理屋さんで何か食べて帰りましょう。

というような感じ。一般人には理解できない、不可解な行動パターンと行動の動機。

なぜそこで寿司屋行くかな、って悩んでいるうちに、彼らはパスタ屋さんにいる。

この行動を抽象的に考えれば「変わってる」です。

そこを魅力と感じるか、ということより、そうした人を参考にする人は誰か、といえば、やはりどう考えても同職種の人たちでしょう。音楽マニアも好きだと思います。

 

曲の展開する動機に「既存の進行感」を連続させ、シンプルな和声で複調的な進行感を連鎖させる、という発明をしたバンドです。ビートルズがやったことをさらに展開しているわけです。ビートルズが200gのポークカレーだとしたら、ダンは1300gの6辛のポークカレーになっているようなものです。基本的に食べる人が限られます。

音楽をやる人のための教科書なのです。そっちから見た方が早いですね。普段1300gを食べ続ける人なかなこられないでしょう。

 

 

Bメロ、サビですが、Steely Danの曲のなかには、サビや中間部で、こうした二つのコードを繰り返す部分が出てきます。機能性が弱くなった分、シークエンスで響きのバランス、脈絡の堆積を行いながら、音楽的脈絡、ストーリーを構成しているように感じました。


これも彼らが確立した技法と言えます。ブルースロックなどでは見られますが、それをこうした構造に展開したところが優れた視点、と言えます。ブルースロックの「構造だけ」を不定調性的進行を持つ難解な音楽に利用した、という点です。


(楽器弾ける人用)例
:CM7 |DM7 |CM7 |DM7 |
Ebm7 |Gm7 |Ebm7 |Gm7 |
Ab7 |C7 |Ab7 |C7 |
DbM7 |DbM7 |DbM7(b5) |DbM7(b5) :|

これを皆さん弾いてどう思われますか?
これは調や機能で分析的に勧化てはいけません。自分が知っている和音の連鎖感から脈絡を作るわです。鍛錬が必要だと思います。

これを不定調性的進行と呼べば、話は早いのです。機能和声で分析しようとするから「変態」に見えますが、至極簡単な手法です。詳しくは拙論を広くご覧ください。

===
たとえば、M7でやってみましょう。下記コード進行に対して、どのようなあなたにとって音楽的印象があるか、直感的に当て込んでみてください。これが全くできないと、ポピュラーより先の和声感に難渋してしまうでしょう。

CM7-FM7-CM7-FM7~
これは、平和な昼下がり、という感じかな。。。などと下記にも自由にイメージを無造作にあてはめてください。

CM7-AbM7-CM7-AbM7~
これは、草原の中の風、というかんじ、、

CM7-BbM7-CM7-BbM7~
これなら、揺れるブランコ、という感じかな。

CM7-F#M7-CM7-F#M7~
これは、、激しく動く雲に、太陽が隠れたり、出たり、そんなかんじ?

CM7-DbM7-CM7-DbM7~
うつらうつら、まどろむように~的な?

CM7-EM7-CM7-EM7~
ビミール袋が風に飛ばされて、あっちへいったり、こっちへいったり。

ここでは、たまたま最初に「風」が浮かんできたので、その他進行にも「風」がイメージされた、という事がいえると思います。明日は違うかもしれません。
それで良いです。あなたなりの「音楽的脈絡」がみつけられれば、いつか音楽的作品の材料になりえます。

でも最初は、表現できない様々な意識の状態があるのではないでしょうか。

・なんにもかんじない
・なんかわかるけどわかんない
・へんなかんじ
・カレー食べたくなった
・なんかいや
・いまはいい

こういう感じでもいいです。

少しずつ「脈絡」が自分なりに見えてきます。

できれば適切に評価できる先生がいるといいですね。

あとはその印象に合わせて、歌詞を書いたり、メロディを乗せる技術を、仲間と一緒に考えられれば音楽はまた楽しくなります。


不定調性教材は下記からお願いいたします。

music school M-Bank 不定調性音楽論一般教材お申し込みフォーム

 

 スポンサーリンク