音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

31, Giant Steps / John Coltrane

ジョン・コルトレーンの不定調性進行分析

同曲については、もう多くの分析がなされ、今更私が触れるところはもう無いので、不定調性論の観点で、他ではあまり書かれないことを書いてみたいと思います。

ジャズ理論でのソロへのアプローチ正攻法については各種サイトや教則本など参考にして頂きたいです。ここではあくまでこのような構造を発想してどう作るか、という作曲的な観点+独自論で書いていくことにします。

   

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<Giant Steps>
B D7 | G B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
G B♭7 | E♭ G♭7 |B | Fm7 B♭7 |
E♭ | Am7 D7 | G | C♯m7 F♯7 |
B |Fm7 B♭7 |E♭ |C♯m7 F♯7 |

コード進行はこれだけですが、見ての通りB-G-Ebの長三度の激しい施調性(旋回する調性感があること=不定調性論の用語です)を持っています。
バラードならともかく、四分音符230以上のテンポですから、いわゆる「転調感」という一般的な音楽的展開感を感じる暇もなく、音楽を行うことになります。

この曲には、他にも様々な提示があります。

同曲は、長三度転調をはじめ、II-Vの変形、ホールトーン的変化、オーギュメントスケールコンセプト、いろいろなコンセプトがてんこ盛りです。

オーギュメントスケールというのは、Cから考えると、
c-d#-e-g-g#-b-c
ホールトーンスケールというのは、
c-d-e-f#-g#-a#-c
です。

メシアンによる「移調の制限されている旋法」における第一旋法がホールトーンスケールであり、第三旋法からオーギュメントスケールも作ることができます。

メシアンの第三旋法は、
c-d-e♭-e-f#-g-a♭-b♭-b-c
です。これはアラン・ホールズワースが「シンメトリカルスケール」と呼んでドミナントコードで使用しているスケールでもあります(REHの教則ビデオより)。

これらも既存の話ですので、別段珍しくないでしょう。

 

音楽の基本概念そのものを新しくしようとした。

率直に言ってコルトレーンがやろうとしたことは、そういうことであり、そしてそれはいまだに「通常の外側」にある音楽である、と結論づ得られたままのような気がします。

そこで不定調性論のような、一曲で何かを変えようとするのではなく、方法論全体から音楽の基本概念を少しずつ教育で変えていければ、より自由に音楽学習から、個人の辺体制の早期発見、早期育成、一周回ってポップス最高、というルーティンを回せるのではないか、と考えています。ようは、もったいぶった基礎教育が長すぎるせい(これ自体は良いこと)で、自分の音楽をスタートできないでモチベーションが落ちてしまう人もいるのではないか、という考え方です。そして45を過ぎて、ようやく自分のやりたいことに目覚める、というのは、すなわち洗脳をされていた、ということなのです。

ジャイアント・ステップス<SHM-CD> 

 

ここから話は飛びます。
楽音12音を規定する最初の段階で、不定調性論は「オクターブレンジ」という概念を作ります。動画もご参考まで。

www.youtube.com

まず、倍音列の中の振動数の比の段階的変化に注目してみます。基音がcなら、
第一倍音(基音)=C1
第二倍音+基音の振動数=C2(オクターブ上)
第三倍音+基音の振動数=G2(完全五度上)
第四倍音+基音の振動数=C3(完全四度上)
第五倍音+基音の振動数=E3(長三度上)
第六倍音+基音の振動数=G3(短三度上)
第七倍音+基音の振動数=およそA#3(短三度上)
第八倍音+基音の振動数=C4(長二度上)

足される音は同じなのに、どんどん音程が狭くなっていきます。すべて各音間の振動数差は基音の振動数です。つまり倍音列上は、C1とC2の差も、C2とG2の差も、C3とG2の差も、C4とA#の差も全て基音の振動数で一定値です。

拙論ではこの数理的な一定値を一つの「単位」とします。
通例は「半音」が一般的な音楽の最小単位ですね。拙論も最後はそこに行くのですが、「音程」という概念を知るために、「基音の振動数」を最小単位とすることで「音程というのは一体どういう存在なのか」を再確認するわけです。

第二倍音の振動数-基音の振動数=基音の振動数
第三倍音の振動数-第二倍音の振動数=基音の振動数
第四倍音の振動数-第三倍音の振動数=基音の振動数
第五倍音の振動数-第四倍音の振動数=基音の振動数

これを音に置き換えましょう。

C2-C1(完全八度)=C1・・計算式1
G2-C2(完全五度)=C1・・計算式2
C3-G2(完全四度)=C1・・計算式3
E3-C3(長三度)=C1・・計算式4

「オクターブ」というのは完全八度の事です。基音の振動数を一つの単位とすると、
C
C-C
C-G-C
C-E-G-Bb-C
というようなオクターブのステップが倍音列には見られます。これらの各音の振動数差はすべて基音の振動数です。ここで大事なのは、

「同じ振動数を足しているのに、現れてくる音名は変化する」
という点です。これは高い音に行けばいくほど、完全八度の振動数差が拡張していくためです。


つまり「音程」というのは、基音の振動数の見かけの変化、と考える事も出来ます。

この辺り教材にて細かく触れていますので、もう少し細かい用語解説や概念の組み立てについては当方教材をご確認ください。

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たとえばCEGというC△は、みかけは長三度、短三度のステップがありますが、基音Cからすると、

長三度=短三度=基音の振動数(M3ステップとm3ステップの差異)
となります。
つまり12音で作られるあらゆる音程が、基音の振動数の変化した姿、と捉えることができるわけです。ひとつの主音が決まる、ということというのは、こういう「一つのステップの存在によって規定されること」と解説することが出来ます。拙論はさらにその先に行きます。

つまり「音程」は、この考え方において、
完全八度=完全五度=完全四度=長三度=短三度=長二度=短二度=基音の振動数差
となります。

私たちの鍵盤は半音のステップの連鎖、つまりm2ステップの連鎖です。これが12半音ですね。
m2もまた基音の振動数差と考えることが出来ます。


では他の音程も同様に連続させることが出来ます。

P5ステップの連鎖→五度圏
P4ステップの連鎖→四度圏
M3ステップの連鎖→オーギュメント和音
m3ステップの連鎖→ディミニッシュ和音
M2ステップの連鎖→ホールトーンスケール
m2ステップの連鎖→クロマチックスケール

ですね。あの五度圏というのは、不定調性論的には、P5ステップの連鎖である、と言えてしまうわけです。

ホールトーンスケールもクロマチックスケールも基音が生み出せます。
オーギュメントスケールやシンメトリカルスケールはM3ステップの複合形となります。

すると、コルトレーンチェンジといわれる長三度連鎖も、M3という「歩幅」をフューチャーしたもの、と考えることが出来ます。

それまでのII-Vは五度や四度が基調でした。P5ステップやP4ステップです。それをM3ステップに変化させた、ということになります。
使用するオクターブのステップレンジを変えた、ということですね。これは音楽の大いなる一歩、まさにGiant、月に降り立ったアームストロングより9年早い、人類の飛躍の一歩ですね。

     

 

たとえば基音CでP5ステップを用いると、真っ先にでてくるのは上方のGであり、下方のFです。これで従来のスリーコードができます。
これをP4ステップにすると、基音がCなら、上方のF、下方のGです。
そしてM3ステップにすると、基音がCなら、上方のE、下方のAbとなります。
するとP5ステップが基調の音楽は、
C-F-G-Cがスリーコードの代表的進行だとすると、M3ステップでの代表的進行は、
C-Ab-E-Cである、といえます。まるで外国語への翻訳ですね。

ちょっと弾いてみて下さい。M3ステップによるスリーコード進行。

C△--Ab△--E△--C△

Giant Stepsの響きになってきます。この響きはM3ステップという「歩幅の基準の変わった音楽の姿」というわけです。他のステップも作れます。それぞれ先人達が作り上げた世界観に当てはまると思います。教材の中でもいろんな可能性について述べています。先人たちはそれをひとつの体系にまとめることはせず、自在に展開していったので、不定調性論のような別の考えで位置からまとめてみたわけです

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この曲はそれをさらにII-Vというブロックで規則的に連鎖していきます。このあたりについてもII-Vの音楽的クオリアの活用、と考えて頂ければ、よいでしょう。「訳の分からない進行の合間に、よく聞きなれた進行感をはさむことで、音楽的脈絡が構築される」
というわけです。

そして不定調性進行と律儀なII-V-Iの混在連鎖が、同曲の解釈をややこしくしていたわけです。
ゆえに原曲のM3ステップをP4,P5ステップに戻すとしたら、前半は
A D7 | F B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
F B♭7 | C# G♭7 |B | Fm7 B♭7 |
とできます。でもこんなのGiant Stepsじゃない!とされてしまうでしょう。

では、現行理論内の拡大解釈であれば極限まで行ってもよいのでしょうか。
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ビ・バップの手法を用いて次のようなことができます。この曲をジャズ理論で無理やりアナライズするとこういうことになってしまいます。

B+D7=B7(b9,#9)ですね。
G+Bb7=Bb7(b9,13)でもあります。
ドミナントの分解ですね。UST分解進行です。これをまとめると、

B7(b9,#9) | B♭7(b9,13) | E♭ | Am7 D7 |
G7(b9,#9) |G♭7(b9,13) |B | Fm7 B♭7 |
E♭ | Am7 D7 | G | C♯m7 F♯7 |
B |Fm7 B♭7 |E♭ |C♯m7 F♯7 |

としてさらにE♭-Am7もUST分解進行解釈してみます。

Eb+Am7=A7(b9,#9,#11)です。また、
Eb+C#m7=Eb7(b9,b13)ですから、すると、

B7(b9,#9) | B♭7(b9,13) |A7(b9,#9,#11) | A7(b9,#9,#11) D7 |
G7(b9,#9) |G♭7(b9,13) |F7(b9,#9,#11) | F7(b9,#9,#11) B♭7 |
A7(b9,#9,#11) |A7(b9,#9,#11) D7 | C#7(b9,#9,#11) | C#7(b9,#9,#11) F♯7 |
F7(b9,#9,#11) |F7(b9,#9,#11) B♭7 |Eb7(b9,b13) |Eb7(b9,b13) F♯7 |
となり、簡略表記すると、

B7 | B♭7 |A7 | A7 D7 |
G7 |G♭7 |F7 | F7 B♭7 |
A7 |A7 D7 | C#7 | C#7 F♯7 |
F7 |F7 B♭7 |Eb7 |Eb7 F♯7 |

です。全体的に裏コードに任意に置き換えます。

<バリエーション1>
B7 | B♭7 |A7 | A7 Ab7 |
G7 |G♭7 |F7 | F7 E7 |
Eb7 |Eb7 D7 | C#7 | C#7 C7 |
B7 |B7 B♭7 |Eb7 |Eb7 B7 |

不格好ですが、半音で7th下降、という形を無理矢理構成することができます。
これはジャズ理論を最大限に駆使した「過解釈なアナライズ」となると思います。ジャズ理論の自在性はこういうところにあり、またこの自在性が難解さにもなる訳です。

こうした流れは、理論解釈では可能ですが、感情論として
「これを演奏してもGiant Stepsを演奏したことにはならないのではないか?」
という想いがするでしょう。この曲はやはり、コルトレーンがやったようにやってみたい!
はずです。

不定調性論では、バリエーション1と原曲は、違うもの、と考えます。和声連鎖の単位や、印象が異なる進行は、異なるものとして考えますので、不定調性論におけるGiant Stepsはコルトレーンの進行以外ない、というわけです(代理という発想はなく、代理した時点で原曲とは異なることを行う、と解釈します)。

バリエーション1はマザーメロディ(不定調性用語=母体となるメロディ、ここではGiant Stepsのメロディ)をGiant Stepsにし、7thコードを和声単位にしたオマージュ作品、となります。別物、ですね。

しかしジャズの拡大解釈が非機能進行を生んだのも確かです。

 

拙論が作曲論のため、インプロヴィゼーションについては割愛させていただきました。
ご了承ください。

不定調性教材はこちらから。

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※同曲のバップ的分解の発想については、佐藤允彦氏ののもとで学習した際の解釈に基づいています。「オクターブレンジ」またバリエーション1への発想はブログ主が検討したものです。各位さまざまな専門書をご参考の上、活用ください。

動画解説などもご活用ください。

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