音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

122."Nevermind" 1 / Nirvana

大きな商業的成功を収めた二枚目「Nevermind」を題材に、同バンドの使用したコード感が持つ意味を当ブログの趣旨に沿って考えてみましょう。

   

まず結論です。
■ビートルズ楽曲には一部怪しい雰囲気を放っていた楽曲群がある。これらの楽曲が持っていたの「不可思議さ」「厭世感」「けだるさ」「焦燥感」は、全く違う方向性からニルヴァーナの音楽的背景、カートの人生観によって拡張され、音楽表現化された。

 

■この和声進行が持つそうした厭世観に特化したようなコード進行を、ビートルズはサージェントペパーズにおいて、「不可思議な世界観」「非現実的な空気感」として完成させたが、ニルヴァーナはひたすら破滅しかない世界への表現を加速させ、音楽が表現しうる負の理想郷ともいうべき限界値を一枚のアルバムで作り上げてしまった。

 

というところでしょうか。

このアルバム、

 

ネヴァーマインド<デラックス・エディション> 


また結果的にカートは若い死に至ってしまいましたが、決して常に希望を捨てていた、とか音楽によって殺されたとか、一義的に考えることはせず、彼が演じきったミュージシャン”カート・コベイン”を自在に解釈し、そこでとどめずその遺産を有効に活用していきたいと思い以下の解釈を行いました。

 

★なお今回はノーマルチューニングのギターでコピーしています。キー表記などに差異があるかもしれませんが、適宜対処下さい。

 

1曲目"Smells Like Teen Spirit"
このリフはパワーコード的でもあるのですが、メジャーコード表記もできるでしょう。

F5 Bb5 |Ab5 Db5|


です。
F=Iとすると、Bb=IV、Ab=IIIb、Db=VIbですから、FメジャーキーとFマイナーキーのダイアトニックを行ったり来たりしている、と考える事もできますが、メロディはFマイナースケール内を動いています。だとすると本来は、


Fm Bbm |Ab Db |


とならなければなりません。でもこれだと変ですよね。そこで三度を消すパワーコードが効力を持ってくるわけです。


この曲の進行は、ベースだけで成り立ちます。三度による性格付けを必要としません。
三度音の社会性の排除。

 

例えばこれを、
F Bb |Ab Db |
としましょう。これを商業的成功につなげたバンドのひとつがビートルズでしょう。

 

このリフの長三和音による、ポップさを打ち消しているのが、F→Bb→Abという長二度、短三度を含んだ移動です。
これもビートルズをはじめポップミュージシャンが活用する平行移動による進行です。
例えば、
C |Eb |F |G Ab |
という和声進行に、皆さんはどんな雰囲気を感じますか?
疾走感ですか?
堂々さですか?
ロック的な感じ、ですか?


カートはこうした進行が「カッコ良さ」とか「行き詰まった感じ」とか「もうどうでもいいや的な退廃感」、自分が日頃感じている言葉にできない感情感を表現できる、と感じたから用いたのではないか、とここで推測してみましょう。


これから12曲見ていくわけですが、そのリフが示す切実なまでのその不安定な退廃感はとても長く聴いていられるようなものではなく、痛い程強烈です。どこか人のあきらめ、不満、焦りを延々聞かされているような心持です。

 

こうした和声進行が演奏者に与える印象は、繊細で感受性が豊かな人には、諸刃の剣のように感性をえぐりとるのではないでしょうか。


「人生をリセットしたい」という厭世観をどうやってサウンドにするか、を実現できてしまった、もっと云えば、生きてる事が辛い、ということを言葉ではなく、サウンドにしてしまった男、カート・コベイン、27才、ショットガンで自殺(1994)。

 

このアルバム、13曲ありますが、おそらくあからさまなマイナーコードはアルバムの最後の曲まで出てきません。
いってみれば、このリフスタイルが一貫しており、バンド名である理想郷を体現しているとも云えます。


純粋に「退廃の美学」としてこの二枚目が持っている徹底した不定調性感と、それが醸し出す厭世観を、一人のアーティストによる渾身の一枚として聴いてみましょう。

その2に続きます。

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