音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

アラン・ホールズワースの楽しみ方(ソロ編)

泣く子も黙る、ホールズワース節。
これほど独自性がある、と思われたフレージングも、いつのまにか多くの人が弾ける、みたいな時代になりました。つまりそうなると、いよいよそれがどういう考え方によって生まれているかを音楽スクールでは解説できないといけない、ということになってきます。

   

そうしないと学校側も「あの人は変態だから」「自分のやり方があるから」しまいには「触れないほうがいい」みたいになってしまいます。同じ音楽人間ですから、ビートルズを理解をしようとする同じモチベーションでホールズワースも理解しようとしたいものです。

さて。僕たち永遠のロック小僧が聴きたいのは、ホールズワースの以下のような演奏でしょう。

 


Jeff Watson/Allan Holdsworth - Forest of Feeling

左chがジェフ・ワトソンの音、右chがホールズワースです。

ホールズワースの魅力は、伝説の教則ビデオ(VHS!!)にまるっと納められていましたが、当時アレが理解できた人がどれほどいらっしゃったでしょう。
今回は、彼のギターソロについて、不定調性論というツールを用いて考えてみましょう。

彼の最大の魅力、「三次元スケーリングソロテクニック(勝手に命名)」。

上記の動画でもそうですが、どんなに単純なコード進行でも、彼のソロは"アウト"(ここでは立体的という意味になっていきます)してきます。音が外れていなくても不可思議に聞こえるのは、クラシックではNGな跳躍の大きな音程利用にあります。これも不定調性論では立体的な「単位の違う領域への移行」と考えます。この辺は、ウチの動画シリーズをご覧ください。「オクターブレンジ」という考え方から、音の単位を再考していくことで、別にホールズワースを分析する、しないに関わらずいろいろな発見があるものと思います。


音楽の教育現場から〜不定調性論全編解説1

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教則ビデオでもそうでしたが、彼には独自のスケールチャートがあり、それに基づいて演奏している、というのですが、私が思うに、あのチャートだけでは少なすぎる、と思っています。
彼のソロをコピーしたことのある人なら分かると思いますが、スケールチャートはあくまで"かすがい"でそれ以外はほとんど即興的に音を紡いでいるようにしか思えないフィンガリングです。

というより、それが音楽の一番楽しいところですから、あのスケールチャートをマスターしても、ホールズワースのようには弾けない、ということは間違いありません。

あの大きい手と、音楽的センスが繰り出すソロが分析不可能だ、ということも、採譜して分かりました。ただ分析しようとしても無理で、全く違う考え方でアプローチで考えることにしました。

それにはまず弾き手側の「協和に対する考え方」を拡張する必要があります。
たとえば、C△に対して、最も協和するのは通例、c,e,gですね。

そしてd,a,bといった音が「コードトーン/テンション」という概念に落とし込まれるでしょう。

それからC△に協和するあらゆる音、f#やb♭といった、ノンダイアトニックトーンが組み込まれてきました。ここまで来るのにも学習時は大変ですね。

ここまでをまとめると、C△で使用できる音は、
c,d,e,f#,g,a,b♭,b
となります。これはもはやスケールです。
(ポジショニングと音の順番を"崩す"ことによって、ただのメジャースケールも、メジャースケールっぽく聴かせない技術を教則ビデオでも提示していました)

 

これはパーカーらが作りだした「経過音的フレージング」が至高の領域に高められたためです。ホールズワースを聴くためには、パーカーやコルトレーンの音楽がどういうものか、せめて頭で理解できていないと"上手く聴き込めない可能性がある"のではないでしょうか。

さて、独自に発展した「ホールズワース語」を紐解くために用いるのが、不定調性論の「数理親和モデル」です。詳細は、下記にて簡易な連載もございます。

circle.musictheory.jp

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ホールズワース氏はあまり、リック、というものを示しません。
「ex.1」というようなフレーズを作りたがらないようです。
真の即興系ミュージシャンだからでしょう。本人に聞かないとわかりませんが、きっと答えを濁されてしまうかもしれませんね。

即興的、というのは、つまり、
Aポジション→(テキトーに弾く)→Bポジション→(テキトーに弾く)→Cポジション
で、移動していくわけです。言葉が悪いですが、この(テキトーに弾く)=ポジショニングの崩れ=不定調性論的にいうと、立体的領域音の使用、が、彼の即興的感覚の優れた能力によって補完されています。この「テキトー」というのは、もちろん経験によって支えられた感覚なのでもっと精緻な脳の繰り出す不思議といってもいいです。
どこにどのようにいく、どのような音を使う、ということを弾く瞬間まで規定しない、という意味です。

ホールズワース氏が素晴らしいのは、この(テキトーに弾く)に弾くところの、シークエンス的な組み立て型や、高度な運指の横移動のセンスです(ギターの人はわかるでしょう)。程度の差こそあれ、ギターを弾く人ならだれでもこれをやるはずです。

皆さんの中には「あ、今、俺テキトーに弾いちゃった、でもけっこういい感じだったなあぁ。。」

って思ったことありませんか?

ちょっとむず痒いですよね。「テキトー」って。

でもそれはあなたの磨き抜かれた音楽的センスから生まれてきたものなんです。

不定調性論な最終的に求める答えもそれです。直感的感覚の研ぎ澄まし、です。

 

いちいちスケールを考えていて弾けるわけがありません。

そういう脳の研究結果も出ています。考える前に指が動くんです。

それを極限まで研ぎ澄ませたのがホールズワーススタイルのソロです。理屈ではなく、内面から湧き起こる抽象的な動機をまるで弓道の的に当てるがごとく集中してあのスピード感の中で出してしまう人。と言えばいいでしょうか。

平たく言えば、自分でも何弾いてるか分からないけど、その瞬間は分かってる。

 

頭で考えて160kmの球をバッターは打てますか? 

ヒントが見えてきたでしょう?何を勉強すればいいか分かるでしょう?

 

革新的なスタイルですね。感性が理論なんて。

「なんだテキトーか」ってそういうテキトーじゃないですよ。研ぎ澄ますんです。

頭で考えるのではなく、指と精神に委ねる。まるでヨガの修行のような境地ですね。

念じて雨を降らせよ!!

そんな事できるわけない、と思ったあなた、ホールズワースにはなれません笑。

 

って、私もなれませんけど。でも多くの努力家をこの仕事をしてきて見ています。シニアの受講生の中にもとんでもないキャリアの持ち主もいます。

彼らは「自分は今からでもギターが弾ける」と信じています。そうやって仕事の修羅場を乗り越えてきたからだそうです。

音楽以外にもいろんな分野を勉強して、それを音楽に活かしてください。

きっといつか言っている意味が分かります。

 

とにかく練習の際は、スケール練習などとっとと済ませて、感覚でソロを弾きましょう。同じコード進行の上で何度も何度も、お客さんが聴いていると思って何も考えず弾きましょう。お客さんに伝えたいことを弾きながら見つける、というぐらいの感覚で。

 

感覚と感性、直感と集中力を磨くんです。

もしあなたが初等音楽理論を学び終えているとしたら。

不定調性論やってもいいですよ。

動画シリーズではそれそれ特徴的なテーマ曲を作っています。

それがあなたの感性の拡張のヒントになるでしょう。

で、話は元に戻るのですが、
「協和の概念の拡張」の必要性は、彼の音楽性そのものが、彼の理論に要求していたのだと思います。C△でどんな音を使ってもいい、のは分かっているが、C△が見えなくなってはいけない、しかし、だからといって、ちょっとやそっとアウトするような感覚は「飽き」がきます。
そこで先の「崩れ」という手法が目立ちます。
型→崩れ→型→崩れ→崩れ
という手法によって、「崩れ」の部分で、自由な演奏が可能になります。これはジャズ理論で言う、ドミナントコードの役割であり、不定調性論における、ハーモナイズポイントのことです。

例えば、簡単な例で

CM7 |CM7 |CM7 |CM7 |

という一発ものの中で「崩れ」を使うとき、

CM7 |CM7 |CM7 |G7(b9,B13) |

と、最後の小節を、勝手にV7化してしまいます。演奏はCM7ですから、厳密には、

G7(b9,b13)/CM7

という複層構造になっている、ということです。こうすることで、CM7上でGオルタードドミナントスケールなどを使えば、自然とアウトしながらも、旋律上はビバップのアウトフレージングのようになり、綺麗にCM7に戻れます。コルトレーンがやろうとしたこともこういうことです。
ホールズワースはホーンのサウンドをギターで表現したい、という発言がありましたが(出典忘れました)、そうしたこともひっくるめてこの手法が生かされていると感じました。

さらに、4小節目が「崩れ」であるとなると、もはやV7である必要はありません。下記を試してみてください。

CM7 |CM7 |CM7 |テキトーに弾く |

これでも似たような効果が出るでしょう。こうしたアクセントをうまく置くことで音楽はスリリングになります。スケールも特に覚え、選択する必要はありません。アウトすれば良いのです。
アウトするためには当然、Cメジャースケールを完全に把握していなければなりませんから、フレットボードは隅々まで覚えておかないといけません。

じゃぁ、そのテキトーに弾くところで何をやってんの?という話になるのですが、彼も答えられないタイプの質問になってしまうのではないでしょうか。
型通りの答えはメディア用に用意しているでしょうが、それ以上に雄弁なのは、彼のソロですから、採譜してみてください。

 

で、この「崩れ」を緊張感のあるものにするために、「協和の概念の拡張」が弾き手に求められます。
C△でe♭をカッコ良く使うためには、e♭→eというように、用いればブルーノート的にカッコ良くなります。これを発展させて、
c→e♭→c→e→c→e♭→c→d♭→d→c
としたり、これを高速で行うことによって「崩れ感」を出すわけですね。むしろこの型のない感じは「和風」でもあります。ホールズワースが日本で好まれるのも、この崩れた感じに詫びと寂びを感じるからではないでしょうか(考え過ぎか)。桜が散っていくような、はらはらと舞っていく協和の崩れ感。

 

C△におけるe♭は、「斜め上の協和」が起きている、とか、「cの上方の裏面の音が反応している」という感覚を初期学習時に身に付けておけば、人間の脳という素晴らしい器官が、ストーリーを作ってくれることでしょう(不定調性論)。そういう聴き方をしてみれば、だいぶ納得だと思います。


ハーモニー編に続く。

 

<参考>
■ALLAN HOLDSWORTH RESHAPING HARMONY
■REH VIDEO Allan Holdsworth Booklet
■Melody Chords For Guitar by Allan Holdsworth