音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

The Beatles / "THIS BOY"のアヴォイドの響き

2017.9.1→2020.5.14(更新)c

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もしあなたが聴いてその音が上手く響かなかったら、それは「あなたにとってのアヴォイド」であり、別に他人に伺いを立てることなどありません。

あなたが十分に学習を積んできたなら。

 

今日のお題はTHIS BOY。
使用した楽譜は、
「バンドスコア THE BEATLES COLLECTION Vol.1
1988年出版 第2版 シンコーミュージック刊行」
です。その他の楽譜(コンプリートスコア)も参照したうえで、臨んでいます。


まずは下記音源から。

This Boy

open.spotify.com

使うのは0:10-0:58のいわゆるAセクションのコーラス部分です。

彼らは基本ハーモニーをその場で感覚で作っているので面白い構造になります(一部ジョージ・マーティンらが作ったフレーズを覚えて歌った作品もあります)。


この部分のコードをポールのベースラインを基準に割り出すと(スコアも参照したうえで)、
D Bm |Em A |D Bm |Em A |D Bm |Em A |D Bm |Em A |
D Bm |Em A |D Bm |Em A |D Bm |Em A |D Bm |Em A |
D Bm |Em A |D D/A |D7 |
と聴こえました。。一部スコアと違いますが、こう聴こえます。

 

で、ここに三人のハーモニーをテンションとしてまぶすと、
DM7 Bm7 |Em A7(9,11) |DM7 Bm |Em A(9,11) |D Bm |Em7 A7(9,11,13を含有したライン) |D(9,11,13) Bm7 |Em A |
DM7 Bm7 |Em A7(9,11) |DM7 Bm |Em A(9,11) |D Bm |Em7 A7(9,11,13を含有したライン) |D(9,11,13) D/A |D7 |


これを見ますと、A7(9,11)やA(9,11)、A7時に(9,11,13)を含んだ感じ、そしてDコードで9,11,13と同様なテンションが入った感じが特徴的なハーモニーになっています。

特にDなどは、3rdと4thがぶつからないようにギター演奏になっていると感じます。
ギターのDコードは1弦が3度になるので、1弦は軽く触れる程度でおけば、ぶつかっても些細な感じになります。

コード表記すると、如実にアヴォイドノートが乗っているように見えますが、このコーラスを「綺麗とはいいがたい」という方はほぼおられないでしょう(ビートルズが嫌いな人はこのハーモニーは虫唾が走るかもしれません)。

この曲の冒頭Dの部分ではM7が綺麗にボーカルラインに響きます。
それに対して、後半のD、Aコードの時は11thがキラキラと響きます。理論通りだと不協和になるのですが、ボーカルの11thに対して、ギターの微細に混じる3rdの感じですから、不協和は極力抑えられています。だから全体を通じて、常にキラキラ感のあるようなM7の音程(またはm2の音程)が響いていることになります。
このサウンドこそがThis Boyの"きれいなコーラス"と言われるゆえんではないでしょうか。

そしてその感じを私たちも聴いて育ち染み込んでいます。

 

osusume-beatles.com


コーラスについてのいきさつがこちらにもかかれていたのでリンク張らせてください。

結果的にテンションが増え、11thのきしみは埋もれることになり、まるでM7thコードのようにm2が響く結果となりました。その響きを「This Boyの11th」と僕らは若かりしころ体に入れることになりました。

 


「さっきの授業ではアヴォイドノートをやったけど、この授業では、それをいかに活用するかを考えてみよう。」というような学習の日々を就学時代に形成するわけです。