事例67 Golden Lady (CDタイム 0:41-)
スティービー・ワンダー レポートの目次は下記です。
M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ2
Aメロ
E♭M7 |Fm7 |Gm7 |Am7 D7 |
E♭M7 |Fm7 |Gm7 |Am7 D7 |
Bメロ
E♭M7 |B♭M7 |A♭m7 D♭7(13) |G♭M7 |
G♭m7 |Bsus4 B7 |Am7(9) |D7 |
Cメロ
Gm GmM7 |Gm7 C7 |A♭M7 |A♭M7 |
Gm GmM7 |Gm7 C7 |A♭M7 |A♭M7 |GM7 |GM7 |Fm7 |B♭7 |
=degree=
Aメロ key=E♭
IM7 |IIm7 |IIIm7 |IV#m7 VII7 |
IM7 |IIm7 |IIIm7 |IV#m7 VII7 |
Bメロ
(key=B♭)IVM7 |IM7 |(key=G♭)IIm7 V7(13) |IM7 |
(key=E)IIm7 |Vsus4 V7 |(key=G)IIm7(9) |V7 |
Cメロ key=Gm
Im ImM7 |Im7 IV7 |II♭M7 |II♭M7 |
Im ImM7 |Im7 IV7 |II♭M7 |II♭M7 |IM7 |IM7 |(key=E♭)IIm7 |V7 |
AメロのIV#m7(Am7)への変化感が意表をついてます。
Bメロはジャズ進行のように転調を繰り返し、Cメロではスティービーらしいクリシェで固められた表現がされてます。
後半は、この半音ずつ、頭のコードがCmになるまで、つまり完全4度まで五回上行して転調していきます。
転調によって高みに登るタイプのパターンの曲です。
これはゴスペル文化(彼も聖歌隊で歌っていた経験あり)などの「昇天」のイメージがスタイルとしてあるのかもしれない、ということはレポート本編でも書いています。
AメロのAm7はII-Vの形を取りながらもD7→AM7とかD7→D♭M7とかには進行せず、Aメロを繰り返します。
Am7自体は、E♭のキーで言うとIV#m7に当たりますから、作曲される方の中には一瞬変??と感じる方もおられるかもしれません。
このIV#m7については前回のユーミン全曲研究でも出て来なかったと思います(IV#m7(b5)はありますが、性質が全く違いますのであしからず。IV#m7(b5)=Im6の転回です)(山下達郎氏の「Ride on Time」に転調的コードとして出てきます。
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作曲される方は、
IM7-IIm7-IIIm7...
と続く、いわゆるダイアトニック進行をさんざん使い倒されていることでしょう。
IM7-IIm7-IIIm7-IVM7
と流れますね。これを逆行させれば、
IVM7-IIIm7-IIm7-IM7
で、「Lovin' You」になります。
こういう順次進行は「ダイアトニック進行」等と呼ばれます。
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これに変化をつける手法として、
IM7-IIm7-IIIm7-IVm7
とか、
IM7-IIm7-IIIm7-III7
IM7-IIm7-IIIm7-IV#m7(b5)・VII7
IM7-IIm7-IIIm7-IIIb7
とかが発想として作りえます。
IM7-IIm7-IIIm7が非常に調的なプレッシャーをかけてくるので、IIIm7のあとに変なコードを置くと、違和感が半端ではありません。
スティービーもこのIIIm7のあとにどんなコードが使えるんだろう、と当然考えたと思います。その時のひとつの実験がこの曲のIV#m7であったのかもしれません。
そこまで意識しているとは考え難いですが、「いつもとは違うところに行こう」とは必ず思っているはず。
強烈な違和感を和らげるためにII-Vの形を取っていますがこのII=Vがしっかり機能しないところがまた良いところです。
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そもそも機能で和声を考えると、IV#m7に違和感があるでしょう。
同Golden ladyの後半にサビが最初に転調する瞬間も唐突にやってきます。
「転調するぞ!」なんて心の準備は与えられません。
洋楽ではこれに慣れてください。日本人の音楽はテクニカルなので理屈先行である場合があり、「楽曲解析できる」のがあ当たり前のように感じられています。
Dm7-G7-CM7
も
Dm7-G7-BM7
も同じただの「和音の連鎖」です。
その2に続く。