音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

「期待の科学」4 ピグマリオン効果とノーシーボ効果

2017-08-10→2019-8-3(更新)

前回

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ピグマリオン効果

単純に言うと、先生が期待をかけた子の学力は実際伸びる、という実験結果の効果の事です。

 

これは先生のほうが「この子は本当にできる!伸ばしてあげたい」と心から信じているかどうかが重要です。その信念でその子に対する行動や掛ける言葉に小さく大きな差が生まれてくるからです。「褒めれば育つ」というのではありません。

・いいところを見つける

・いいところに気づかせようとほめる

・それに反応してくれる

・その反応を好意的に受け止められる

・自分に何が出来るか考える時間を割く

・熟考したことを話す。

・良い返事がある

・実行する

・結果が出る

というサイクルがすべてうまくいかないといくら効果があったとしても、なかなか困難です。

これは互いの相性とか、褒められるとやらなくなる性格とか、慣れてくると新鮮さが無くなって飽きてくる性格とか、実際自分の身に不幸が起きてしまった、とかそういうことが起きるからです。

   

そこには様々な要因があり、何が影響するか分かりません。

同書にも書いてありますが、例えば、そのキッズと出会ったのが真夏で、気を使って冷たい飲み物を出してあげたとしましょう。するとそれがあとあと小さなイメージになり「この人=冷たい人」となったりして、いざ冷たい態度みたいなものが出てしまった場合、そのイメージは確定されます。予期せぬことですね。

 

笑うから気分が良くなる

気分が良くなるから笑うのではない、笑うから気分が良くなる、という現代心理学の考え方を「認知の具現化」といいます。

 

実際に、明日家族が死ぬかもしれない、というときにお笑い番組を見て元気になろう、とかいう人は殊勝です。また見ても実際に笑える人は素晴らしいです。

なかなか難しいですよね。

「自分、今、笑っていいのかな」

って思ってしまうと思います。つまり自分で判断しているんです。

 

だから率直に、何もなくても元気になりたければ、笑えばいいんです。それで元気になる、という発想です。

 

2010年のカーニー・カディ・ヤップの実験が掲載されていますので紹介します。

何人かの被験者に、体が大きく見える姿勢、または小さく見える姿勢を1分間取ってもらって、その後唾液の分泌物の検査をする、というもので、調べるのはホルモン物質で、

気持ちが萎縮したときに出る「コルチゾール」

自信に満ち溢れているときに出る「テストステロン」

です。結果は皆さんの予想の通り。体を丸めていた人は、コルチゾールが増え、テストステロンが減ります。大きく見せようとした人はその逆。またそのホルモンのためか、様々な質問にも大きく体を見せる姿勢を取っていた人は肯定的な回答をしたそうです。

こういうのは昔の哺乳類としての生存本能に帰属するんじゃないですかね。

相手を威圧するためには体を大きく見せて威厳に満ちていないといけないとか、危険なものから自分を守るためには、「天狗」になっていたら思った以上に強かった相手にやられてしまうし、時には従順にすることで相手から見逃しを受ける、と言った生存本能のような気がします。

 

この問題点を考えれば、

「天狗になる」

とその人は、そのホルモンのせいで、「ミスをした時に生じる不利益」を感じづらくなる、というわけです。

だから"調子に乗っている人"はホルモンのバランスのせいで、そうなっているのであって、上手にサポートしてあげる必要があります。

これはホルモンの問題なのです。何か自分が凄くなったわけでも、偉くなったわけでもなく、体内物質がそう思わせているだけです。それは気持ちのいいものなので、それが「切れる」までは突っ走るでしょう。若い時はそれで被る不利益より、学びのほうが多いのであまり気にする必要もないですが、この「天狗」には「嘘を平気でつく」「道義心に欠ける」といった症状も出るそうなので、そういうタイプの人に変貌したら厄介ですね。でもそうなると挫折への道も早いので、ほおっておいた方が良いかもしれませんが笑。

 

これらのことは研究でも確かめられているそうです。

「期待」の科学 悪い予感はなぜ当たるのか 

 

 成功のカギはブドウ糖

成功のカギはポジティブシンキングでも、引き寄せの法則でも、心のメソッドでもなく、それらの思考の源であるブドウ糖である、という答えを読みながら感じました。

自制心の源も「ブドウ糖なのでは?」という心理学者の考えかたが掲載されています。

まあ人生の行動と思考の根源は脳の働きですから、脳を動かすためのブドウ糖の必要性は理論的にも納得ですよね。

 

ある一つのことを我慢して自制心を消耗した人は、続く筆記試験の結果が良くない、という結果が載っていました。

 

そうなるとやっぱり大事なのは「食事」となります。

我々の体は自分が食べたもので出来ている。まあこれも納得。

しかしここにもプラシーボが関わっていて、栄養ドリンクを飲むと、その効果が適切なカロリーになる前に元気になる経験、というのを誰でもしています。薬もそうですね。様々な実験で「○○すると自制心が長持ちする」と吹聴して実験すると確かにそういう結果が出ているそうです。 

個人差があるでしょうが、やはりこういう「意識の問題」はとても大事で、これも笑えば元気になる、という理屈を証明しているように思います。秘められた力というのは案外大きいってことなんでしょうね。

 

ノーシーボ効果

プラシーボ効果の逆の用語です。1961年ぐらいから使われた用語だという事です。

筆者はこの効果についての研究に注目していますが、私もこれは重要だと思います。

悪い予感がなぜ当たるのか、「これは毒だ」と言われたらプラシーボの反対の効果が起きる。失敗すると思えば失敗する。不幸になると思えば不幸になる。

という事の脳のからくりが理解できるからです。

同書には様々な実験結果が載っています。

プラシーボが起きるなら、自分が不幸になる、と思ったら絶対になりますよね。そのくらい生命体というのは、脳の操縦にコントロールされている実験結果が多数出ているからです。

 

シーソーの一方がプラシーボで、一方がノーシーボである、と同書では書いてあります。間違いないでしょう。

音楽だって、俺はいい曲が書ける!

って思っているから書けるんであって、何となくじゃできません。

つまりそういうことに脳はカロリーを使っているのだと思います。そしてどんな状況でも好転させたいと思うときは、プラシーボ効果を引き起こすように潜在意識はプログラムされているのではないかと思います。

 

=他の出典から==

年輩者は、歳をとると記憶力が落ちる、と信じています。

しかし実際にはそう言うことはないそうです。

これも自分に対しての暗示なのでしょう。

「忘れっぽい」「しわ」「孤独」と言う言葉をイメージさせると、若い人でも歩く速度が遅くなることが知られているそうです。これは本人の意識に上らないようにさりげなく見せても結果は同じだそうです。

偽薬効果-Placebo effect-

自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80」より。

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集団心因性疾患(MPI)

一種の集団ノーシーボ効果です。

誰かの不安が人から人に伝わり、皆がそれらの予感を現実化してしまう、という表現されていました。

まずはこの言葉だけでも覚えておきましょう。

オーケストラだって、バンドだって、アイドルグループとファンの組織だって、これがなければなかなかポジティブに続けられないと思います。

一人で音楽をやる大変さは、このMPIが良い方向で起きる可能性が少ないからではないか、とすら感じます。よくよく状況を考えて、利用できるものは利用する、そういう精神が新しい「音楽組織学」というような学びの場になっていくのではないか、と思います。