音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

『アフリカ音楽の正体』から不定調性論第六章への展開

           アフリカ音楽の正体

2016年の著書ですが、遅ればせながら読ませていただきました。

不定調性論の第六章の内容を補填できる素晴らしい内容でしたので、また貴重な参考図書として活用させていただきたく思っております。

   

勝手ながらブルースに通じる部分だけピックアップして書かせていただきます。

■第三章 アフリカに「ハーモニー」が響く

私はアフリカ民族に平行五度、平行四度、平行三度を操る部族がある、というような話は、「初期のジャズ」ガンサー・シュラーの著書で知りました。

初期のジャズ―その根源と音楽的発展 (りぶらりあ選書) 

当然、シュラーはジョーンズの著書からの参考としています。

『アフリカ音楽の正体』ではさらに「飛越唱法」についての言及や、

www.ongakunotomo.co.jp

ストリーミング配信による著者自身の録音物の提示などで、より臨場感のある勉強をすることが出来ました。

不定調性論では、これらの平行ハーモニーのアプローチからブルースのI7-IV7という展開の独自解釈を拡張していくのですが、今回ここに本書に出てくる「和声的等価性の原理」を活用することが出来そうです。

同書P114以降に出てくるのですが、「ヴェンダ人の子どもの歌」の旋律が、ラから始まるフレーズと、その下のミから始まる二つのフレーズが、ヴェンダ人にとって代替可能な音である、としているというのです。

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これらの音は代替が可能で、それぞれで色付き音符の音で出来た旋律、色なし音符で出来た旋律はそれぞれ一緒に歌っても、単独で歌っても、同等と考えている、との事です。

 

ブルースにおいてI7だけの旋律が続いてIV7に変化していく、という様も結局こうしたある種の等価性によるものと考えることもできます。

我々からすると、I7から四度上げて歌うのは、「サブドミナントへの展開感を出すため」みたいに感じてしまいますが、このように二つの音の関係を「同等とみる」「代替可能とみる」という発想はしません。

これはいうなれば、

FM7  G7  CM7

Dm7  G7  CM7

を同等なものだ、と考える代理和音の発想と似ている、と考えるとなんとなくわかります。

しかし紐解けばジャズの和音代理の発想は、西欧から飛んできている発想であり、ジャズの伝統がそこに混ざっているとすれば、アフリカ系アメリカ人のミュージシャンの思想伝統も入っているわけですから、この和音を代理する、という発想も、こうしたアフリカ音楽における、「音の代替」という文化的精神性からきているのかもしれませんね。

 

またカリンバ(学術名ラメラフォン)における自然倍音の音配置についての言及なども興味深く読みました。

 

またクワーク歌謡の一曲「サウォノ」における三度のあいまいな唱法についても、「ああ、これはブルーノート的な色彩だな」と感じました。三度に明るい、暗いという差を設けず、グラデーションを楽しむかのような代替性もアフリカ音楽独自の発想で、ブルースが明るかったり暗かったりしてブルーノートを動かす、という慣習もこのあたりからきていると考えずにはおられません。

この辺りも自身の教材に一筆加えさせていただきたいところです。

     

■第五章 太鼓は話すことができるのか

 太鼓のリズム、音程叩き方によって、「酒が飲みたい」などと訴えることができる、という話で、こうしたアプローチは、やはりブルースや楽器セッションでの、「楽器による会話」という発想に行き着くと思います。

 

ブルースセッションなどで「もっと会話をしようぜ」と言われたことがあります。

これは音楽的素養のある人がその経験値から得た表現、というよりも、アフリカ音楽の血にずっと刻み込まれてきた、楽器によってコミュニケーションをする、という発想に行き着くのではないか、と感じました。

 

また同書で言及される、即興能力の高さ、元の旋律を独自の感覚によって改変してといく、という発想も、ジャズの原曲をどんどん変化させ、リハーモナイズし、自分の音楽性に取り込んで演奏する、という発想に行き着きます。

 

こうしたアプローチは、アフリカ民族だけに見られるものではないのでしょう。

日本人だってブルースに心酔できる人がいますし、西洋の即興音楽家も同様に楽器で会話をしたことでしょう。クラシック音楽の伝統としてあまりメジャーに使われてこなかったより現場主義的な概念「即興」「改変」というアプローチがブルースやジャズの真ん中に置かれている、という点が痛快で、より普通の人が気楽に音楽というもんを追求できて、現場で地合いに変化させ、その自由度が文化の主流だった、クラシック音楽との違いとなり、「そういう自由さを好む人たち」によって楽しまれ成長していったのがブルースであり、ジャズであり、ロックであり、ポップミュージックなんだろうなあ、なんて感じました。

 

ご興味のある方は是非読んでみてください。ポップミュージックのルーツが分かる一冊です。

アフリカ音楽の正体