音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

『なぜ、あの「音」を聞くと買いたくなるのか』

音と音楽の勉強での一冊です。

音楽を教える、というのはその曲の知識やテクニックももちろんなのですが、やはり音に対する人体のそれぞれの反応がどんなふうにその人を動かすか、みたいなところをちゃんと説明できないと、実はテクニックも上達しないんですよね。

 

 

なぜ、あの「音」を聞くと買いたくなるのか―サウンド・マーケティング戦略 

 

今日のお題はこれ。凄腕のテレビプロデューサーとPRコンサルティングマンが書いた一冊(2016)。

"子供のころに聞いたアイスクリーム移動販売車の音楽。懐かしい音色を久しぶりに聞くと、脳の中では感情、自意識、運動などをコントロールする部分が活性化し、子どもの頃の記憶がよみがえる。(カリフォルニア大学デービス校神経科学者ペートル・ジャナタ教授)"

馴染みのある歌ほど、脳の前頭前野が活発になるそうです。

脳の前頭前野は脳の中で特に重要な場所で「記憶や学習などをコントロールしているところ」なんだそうです。

参考;新聞の音読(子ども)

 

聴覚がもっとも早く反応する

人は聴覚が五感の内で最も敏感なんだそうです。音に対する反応とか、情報処理の能力が発達しているという意味で、音楽に対する情報処理も行われる、という意味で音楽文化の発展なんでしょうね。

聴覚→0.146秒

触覚→0.149秒

視覚→0.189秒

味覚→0.5秒

嗅覚→0.5秒

陸上選手は0.06秒で足の筋肉が反応し、視覚反応は0.189秒後に反応するそうです。

 

イヤーワーム現象→思い出や郷愁を買う行動につながる

何千回も聞かされた曲や音が耳に残る、というのを「イヤーワーム現象」というそうです。あれって専門用語化されてるんだ。。。不快なものに限らないそうで、結局アイスクリーム屋さんの音を聞いて、アイスクリームを買う、のは、そうした脳の反応によって起きた情動を満たすために、アイスクリームとともに、自分の郷愁感も買っている、というわけです。だから音が効率的に作用すれば、お客さんは二倍、三倍のものを同じ価格で購入していることになる、という意味でも音の効果が作用する事っていろいろあるんですね。聴覚が味覚を支配する、と言う実験結果がいくつも書かれています。つまりこれが違う音楽であれば、またその音楽に合う別の人の感覚を刺激する、というわけです。

ハンバーグが出来立てでジュージュー言っているのは、出来立てを食べてもらうという臨場感を「音」が後押しし、また人は音によってその臨場感を確かなものにしている、という意味で、出来立てである、という事よりも「ジュージュー」のほうが強行テロのように脳に刺激を与えている、ということです。こういう効果を「ブームムーブメント」というそうですが、これはこのブログでも紹介している「共感覚」につながることで、音楽家はこの音に対するイメージを音楽に抽象化する能力に長けているわけです。

www.terrax.site

 

   

 

ロックミュージックが有効なとき

若者向けの自動車のCMやちょっとおしゃれな文房具でも、高校生をターゲットにするなら、やっぱりロックの躍動感のあるサウンドが効果的であることはもう誰でも感づいていることでしょう(若者がかならずしも重低音を好むわけではない、という結果も出ています=要はターゲットを絞る際の顧客の性格設定においてロックをどう使うかを議論すべきです)。

一時期植物に聴かせるのはモーツァルトが良くて、ヘビーメタルだと枯れる、みたいな話でロックをそうした論理で否定しようとするマーケティングがありましたが、それは根拠がなく、そうした否定的観点よりも、

「ロックをどう使うか」

を考えていくのがやはり真のビジネスマンの才覚なのではないでしょうか。

同書に書かれている例は面白いのがたくさんあるのですが、

「機内食がおいしいと感じられないのはエンジン音が原因、エンジン音は塩分・砂糖・スパイスにたいする味覚を鈍らせる、またカリっとしたものを食べたくなる効果」という研究

「微妙で繊細な風味を味わってほしいときはロック音楽のビートとメロディが有効」という研究などなど。

また自分が好きなBGMを流すと料理がおいしく感じる、というような研究、など、いろいろな場面でこうした研究結果を用いることができれば、仕事のやり方も方向性もいろいろ見えてきますね。

やみくもに良いものを作るだけでなく、人の脳に対する勉強と研究が必要、というわけです。

 

1999年の研究ですが、「レストランでスローテンポの曲を聞きながら食事をすると、アップテンポの曲を聞いた場合よりも13分56病長く店に滞在した。」

とかそんなこと18年も知らずにいました笑。

めちゃくちゃ使える話ですよね。食事をする時間が長い、という事なんですね。これがスーパーマーケットだと36%の売り上げ増につながる話なんだとか。

いつもこれが良いとは限らないのでしょうが、自分の趣味の音楽を流すよりも、購買活動の促進を考えたほうが良い、というわけですよね。

でもスーパーマーケットって独特なイージーリスニングを流していますが、あれも購買意欲を活性化させる、という目的なんでしょうが、曲調の中には安易な感じの曲、30分で作れるような曲もあります。十分に吟味してBGMを流す、というのは結構大事なんですね。

 

MP3について

「iphoneやipadで音楽を楽しむのは、mp3の音が好きなのではなくて、美しいデザインで、シンプルな操作性、ポケットに収まるコンパクトさで音楽を自在に楽しめるから」

というようなことが書かれています。

つまり、これでさらにハイレゾのいい音で容量も軽く、曲も何千曲も入るなら、そっちにする、という話ですよね。mp3しか聴かない、とか、いい音で聴こうとしない、というわけではないです。

www.youtube.com

本当にいいスピーカーのいい音というのは、比べ物にならないライブ感がありますからこれがiphoneから聞けたらたまりません。

やはりいい音はいい音を聴ける環境に出向いていく必要があります。

 

音への理解は他者への理解

同書ではあまり述べられていないのですが、共感覚は誰でもある程度のものは持っていて、それぞれ違う、という点がポイントです。

だから良い音楽を聴いてもなんとも思わない人は、レストランで美味しい食事をしようと思わないし、スナック菓子で済ませることもできます。美味しい食事をするためには今より稼がないといけないし、努力しないといけないし、自然とそこに向かって進むわけです。ホームレスでも生活は十分できる日本社会において、人をわけてしまうのは、そういう良い意味での強い欲望を持って強く生きられる人になれるか、ということで、こうした研究が明らかになってきた以上、ただ自分はがむしゃらに頑張っているのではなく、その音が与えてくれる無意識への欲求に渇望を持っている、という事への理解からのガムシャラなのだ、という事を理解すると、今自分が何に対してガムシャラなのか、という事が分かるのではないか、と思います。

一生懸命練習しているのは、ステージでお客さんからのあの大喝采を浴びたいから、ライブが終わった後の打ち上げのあの音空間にまた戻りたいから、彼女が拍手してくれてお疲れさま、と言ってくれる声がたまらないから、そういうことがすべて「強い欲求」になっている、という事のように感じました。

そしてそれらがすべて個人の共感覚的な情動性によるものであるのだから、どういうお音を出せば喜んでもらえるか、利益が上がるか、という事を知るためには来てくれているお客さんのことを考えないと答えは見えないし、相手のこと、他者のこと、社会のことに目を向けられないとその答えは出てこない、という事になります。

 

自分だけが良ければいいや、という発想では自分の人生すら豊かにできない、という理由は、そうした社会の成り立ちからの離脱である、という事がわかりますね。

 

芸術やっている人にはやはり良いプロモーターが付くべきであり、良い伴侶がいるべきであり、良いパートナーがいるべき、という観点もある種納得です。

音楽を教える立場として、こういったことも含めて音へのイメージの育み方、他者とのかかわり方、自分の欲求、といった面での展開を一緒に考えていければいいな、と同書を読んで気が付くことが出来ました。

 

なぜ、あの「音」を聞くと買いたくなるのか―サウンド・マーケティング戦略 

 

マーケティングだけでなく、人間が豊かに生きていくためのヒントの書、として、特に音楽を主体的な位置に置いている方に読んで頂きたいですね。