音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

JASRACの音楽教室著作権徴収について考えてみよう

所感

先生方がご自身の曲を教材にして使うに当たり、年間契約で教室がグロスで支払った場合、果たして使用した権利分、先生は自分の楽曲の使用料をちゃんと受け取れるのか、という問題に行き当たると思います。

これを証明することの難しさか、"音楽使用料を払う、というより、JASRAC運営補助費を払っている"というニュアンスに見えてしまっている点を感情的に批判しているように感じました。双方証明できない問題ですから、わざと証明できない点を批判して運営を挫くみたいなやり方は下策です。

互いの理解、透明性のある運営のために、自分はどうして欲しいのか、を筋道を立てて主張する努力をする、という姿勢に向かって主張できるかどうかです。相手は法律なので、感情面で説得して批判を成り立たせる、というのは問題をややこしくするだけです。

また、使用料を払うに当たって教室側の理解を最初から得ようとしない点、音楽教室を詐欺まがいの権利泥棒と決めつけるような主張を感じさせてしまっている点などが誤解を助長し、それを払拭しようとはしない点(と結果的に見えてしまっている)などもいわれのない批判を浴びている点だと感じます。ここは感情論ですし、よくよく文章見れば誤解であることは明るのですが、世論のヒートアップは理屈で治るものではありません。人々が火炎瓶を投げ始めたら論理では治りません。

仕事の進め方が丁寧でありながら無慈悲だ、とも我々は感じます。しかしそれが経営というものです。しかし一途な音楽家はそんな情のない世界には住んでいないので「びっくりしている」というのが本音なのです。世界のこともよく知らず年貢をあげられて困っている、というだけです。

それが「あいつらは無断で楽曲を使ってぼろ儲けしている」みたいな感情論になっているわけで、ここではそれは取り除いて考えなければなりません。

私もウハウハ儲かっているわけではありません。教育業界は教育を優先していますので私腹を肥やすどころか、自分の人生を犠牲にしないと人を育てる、ということはできません。全て受講生のため、学校運営のために全ての経費は消えてゆきます。

統治したいなら民の声を聞け、とは将の言葉ですが実際はそこまで優れた将はなかなか生まれないのかもしれません。

私は今回の件に、そこまで意見があるわけではなく、なるほどじゃあどうやって支払いを捻出しようか、と新たに頭を悩ませているのみです。

 

 提案

講師が自身の楽曲を「教材」として登録し、それらの管理運営に教育団体が幾らかのお金を支払い、使用に関するプラットホームを作り、使用履歴と支払い発生の仕組みを作っていただきたいです。有料BGMのように権利を購入し使用する、というわけにはいかないのでしょうか。

また新人講師の教材としての楽曲を個人として音楽教室での使用楽曲としてJASRAC主導で精査して登録するシステムを作ることで新人講師を補助し、音楽教育の発展や楽曲権利の啓蒙を行う、というようなことはできないでしょうか。音楽教育に特化した楽曲というものも作れるはずです。

そういった「共に音楽活動を増進させようという配慮は一切しないつもり」であるなら、反発があっても仕方がないでしょう。

今後の音楽の権利拡大をどのように考えているのか、音楽教育における音楽使用について会社としてどのような未来を感じているのか、ということを布教していくことで各音楽教室が初めて、受講料の値上げ、または経営状態によっては楽曲の使用を控えオリジナル楽曲での教材にしていく、といったガイドラインの再編成、カリキュラムの再編成を準備する必要性や啓蒙期間を積極的に設けられるのではないでしょうか。

問い合わせる機会もあるのですが、もともとJASRACの社員の方はとても丁寧で大変納得のいく説明をされる方が多いですが、自社の仕組みそのものに困惑をされているような空気感を言葉の節々に感じる時もあります。

小さな音楽教室や音楽教育全体に柔軟な担当者、責任者が今後どんどん増えることを願って止みません。

 

 

www.musicman.co.jp


こちらによれば「2018年1月より実施する予定。開始当初は、楽器店・楽器メーカーの運営している約9,000の教室を対象に徴収を行い、個人運営の約2,000教室については、管理体制が整った段階で対象にしていく方針だ。」いつ頃スタートするのかなぁ。。徴収してみてその世論を見ながらなんでしょうね。

 

たとえば、

受講生0名から、新規に学生募集して

月に5名入学、

1レッスン5,000円

10回で卒業(受講料50,000円)

全てのレッスンで5分の曲を3回使用する、

とした場合の「三年目」

を考えてみましょう。

 

<疑問>

・そもそもAメロの最初だけを歌うレッスンとかも1曲を題材にした、ということで全額になるのでしょうか。原曲は使わず、ただ講師がアカペラで歌うだけでも同様でしょうか。生徒が休んだらその日のレッスンで使用予定の曲は権利を払うのでしょうか。

教室からの徴収の方法はどうせグロスになるのですから、レッスン数別のようなガイドラインにしていただきたいです。音楽教室も名値上げをしなければなりませんから、上手に値上げしやすい告知をしていただくのが庶民への温情ではないでしょうか。

 

使用料規程の変更(第1節演奏等「10音楽教室における演奏等」の新設および「4 カラオケ施設における演奏等」の一部変更)に関するお知らせ

こちらにその変更内容が記載されています。

 

下記の計算解釈、間違っていたらご指摘ください。

その都度アップデートいたしますm(   )m。

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http://www.jasrac.or.jp/news/pdf/17060702.pdf

これによれば、

<年間契約をした場合>

「年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合の1施設あたりの年額使用料は、受
講料収入算定基準額の 2.5/100 の額とする。」

※⑤ 受講料収入算定基準額とは、前年度に当該施設で行われた本協会の管理著
作物を利用した講座の受講料収入の合計額とする。ただし、本協会の管理著
作物を利用した講座が特定できない場合は、音楽を利用した全ての講座の受
講料収入の合計額の 50/100 の額とする。 

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まず先のシミュレーションで初年度に人数がどうなるかというと、

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となり、二年目以降は月間在籍数が常に25名になると考えられます。

二年目は5名×12ヶ月=60名の入学が年間で見込める場合で考えます。

三年目を考えるわけですから、「前年度に当該施設で行われた本協会の管理著
作物を利用した講座の受講料収入の合計額」というのは、

5名×12ヶ月×50,000×2.5/100=75,000円(税別)を年間の著作権料として納めることになります。

でも、他の場合は計算したら、いくらになるんだろう。
 

 

<1施設あたりの月額使用料>

年間契約しなかった場合の月額使用料で考えると、

 

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ですから、みなさんそれぞれ隔週で受講する場合、月間受講料は6,000円ですから、

25名の在籍がいて、これは30名までに該当するので、

月額支払う著作権料は9,000円になります。

あれ?この受講者数というのは、延べ人数なのでしょうか、それとも月間在籍人数なのでしょうか。

受講者数とは、備考⑫を除き、当該施設で開講している各講座の定員の合計をいう。

ウチの場合はマンツーマンなので、定員というのは1名です。「各講座」が10回セットで開講される講座のタームの事を指すなら、講座受講生数は25名です。ただ毎回1コマを「各講座」というのなら、延べ人数50名、となります。

うーむ。難しいですな日本語は。

この辺は契約する前に聞かないとね。。。

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ちなみに月額9,000円ということは、年間で

9,000円×12=108,000円(税別)になります。

 

で、ここであれ???ってなりますよね。7万と10万じゃ、だいぶ違う。

 

延べ人数になると、毎月50名の人が受講するわけですから、この場合、15,000円を毎月に払うことになりますから、

15,000円×12=180,000円(税別)になります。

 7万と18万じゃ全然違うで。。。

 

で次のような表記が。

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「年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合の1施設あたりの月額使用料?」

うん?年間契約の場合75,000円が年間に支払う全額じゃないの?

ウチの講座一回あたりの平均受講者数は1名です。

ていうことは月額使用料は4,500円、、でいい場合もあるの?

それともこれ、別途年間契約代金を払うのかな??

月額ってことは4,500円×12か月=54,000円??

 

結局、ウチは何を基準にして、いくら払えばいいの?

すみません、この下りがわかんないです。。私のようにアホな関係者もいますので、できる限りわかりやすく、と言いますか簡潔な徴収システムを発明いただきたいです。

 

一曲に対してそれぞれの著作権割合を計算して支払うことができないから、グロスで払って、支払う形態だけ決めて?というやり方でしょうか。

これは正当な計算だ、と庶民は思うでしょうか。

むしろ年貢が新たに課された、というイメージしか感じないかもしれませんよ。

「今回のお上のやり方は無慈悲じゃぁ。。」JASRACの人で無慈悲な方に出会ったことはありません。むしろ本当に分かりやすく簡潔です。

 

 

 あ、もう一つあるぞ。。。これだこれだ、これなら間違いない。

<著作物 1 曲 1 回ごとに使用料を払う>

② ①によらない場合の使用料は、著作物 1 曲 1 回ごとに定めるものとし、その使用料は下表のとおりとする。

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ウチは1回の受講料が5,000円(仮の話よ)だから、受講生は定員1名なので、30名までの枠の80%だから、

450円+150円+150円×0.8=600円(/1曲1回再生)かぁあああ!!

これってitunesで1曲ダウンロードの何倍!!

いや、3回再生しているから(例えばですよ、1回目はサクッと歌って、指導を挟んでもう一回、さらにまとめで最後に一回歌ってレッスン終わり、と仮定して。ですよ)

600円×3=1,800円!!!

毎回1,800円払うの???

え?ってことは、月間50コマだから、

1,800×50=90,000円!!!!(税別)

年間で1,080,000円(税別)

 

売上の40%に近いじゃないか。

 

これは、

年間契約をすべきの選択肢にしないとつぶれます。

 というのがわかります。管理が面倒だからみんな年間契約にしてね、という意図すら感じます。そういうことに庶民は敏感です。この感じが逆に「作曲者の権利を顧みない」みたいなニュアンスで取られてしまうのだと思います。難しいですね。

 

2.5%がどのように妥当なのかを説明していただく必要がある、ということになるのでしょう。

 

皆さんレッスンを受けて刺激を受けてライブに行ったり、自分でCD大人買いしたりしてくれていますから。そういうことを推進していくことが自分たちにとっては著作者を守る仕事だったわけです。

これまで自分が書いてきたブログも彼らの隠れた価値を提示し、表現物に与えられるべき価値を守ってきたつもりです。

 

著作権法に次のように書かれています。

リンク;著作権法

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第三十五条  学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2  公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

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音楽教室は、上記によれば営利団体かもしれません。

この条文もっと変えていただきたいです。営利を目的とした場合の複製の取り決めも決めていただきたいです。時代はだいぶ変わっているのですから。

 

問題は一点だけです。金額がちょっとバラバラすぎて、自分たちが適正な金額を払えるか不安、という点を相談したい、ということだけです。

場合によっては受講料を値上げする形になり、結局お客さんにしわ寄せが行き、JASRACさんも長い年月で見れば売り上げの減少につながるでしょう。それが世の理だからです。最初は圧政で一瞬統治できても、世界は川のように高いところから低いところ自ずと流れてゆきます。圧政は必ず崩壊し、圧政を敷いた者は子々孫々まで祟られます。

 

⑬ 音楽教室における演奏等のうち、利用の態様に鑑み本規定により難い場合の使用料は、利用者と協議のうえ、本規定に定める使用料額の範囲内で決定する。

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と、書いてくれていますのでまずは相談ですね。そう、最初から相談、交渉すればよいのだ。

 

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音楽は無料化されていく道を進んでいます。いずれは音楽教室の権利侵害よりもインターネット上の権利侵害の方の対処に追われることでしょう。

音楽データにタグ付けして、どこかで再生されるたびにブロックチェーン的なものに書き込まれ、自動的にアーティスト側に広告クリック料のごとく入金換算されていく、というシステムがいずれ現れます。仮想通貨技術において銀行が必要なくなるように、ブロックチェーン的技術によってJASRACが必要なくなってしまう可能性もあります。むしろその仕組みを早く作り、サブスクで支払う、ことで徴収できる金額計算と、1曲1曲加算して売り上げる場合とでどのくらい差があるのかを、計算しして提示する必要があると思います。

 

www.garbagenews.net

どんどん売り上げが減っていくから、モチベーションも落ちて、互いに協力しようという気概もなくなり、今の利益も奪われたくないので、誰も値上げには協力してくれず、野放しにされていた部分を捜しだし徴収することにした、という感じに見えてしまっていていろいろ不満が出てしまうのだと思います。
==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== 

音楽は消えてなんかいない。いつも心にあるよ。心のほうが消えてないか?

  

音楽はどこへ消えたか? 2019改正著作権法で見えたJASRACと音楽教室問題